[人口減社会]「少子化のわな」悪循環…出産担う女性減、出生率低下2015年6月6日3時0分 1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率が9年ぶりに微減した。深刻さを増す人口減、少子化の現状と課題、歯止めがかからない背景を探った。(編集委員 阿部文彦、渡辺嘉久) ■現 状 日本の合計特殊出生率は1975年に人口維持の目安となる2を切り、2005年には1・26にまで落ち込んだ。その後、人口の多い第2次ベビーブーム(1971〜74年)世代が出生数を下支えしたことから、微増していたが、14年は1・42で、前年を0・01ポイント下回った。今回、出生率が下がったのは、20歳代での落ち込みが原因だった。若い女性の出生率が低い状態が続くと、低下傾向から抜け出すのは難しい。 生まれる子どもの数も減っている。73年に209万人だった出生数は、100万3532人と半分以下になった。出産を主に担う20歳代、30歳代の女性の人口が減っているためだ。第2次ベビーブーム世代も、40歳を超えてしまった。 出生率の低下により、日本の人口は2008年の1億2808万人をピークに減少局面に入った。このままだと、60年の人口は8000万人台に落ち込むと推計される。 少子化は先進国に共通する問題だ。近代化とともに、衛生状態が改善し、多産多死から少産少死の社会に移る。さらに、養育コストの増大、結婚、出産に対する価値観の変化が出生率を押し下げ、少子化が進む。 日本、ドイツ、イタリアのように、出生率が1台前半を低迷する国もあれば、スウェーデン、フランスのように、2000年以降、2前後にV字回復を果たした国もある。違いは、出生率が一度でも1・5を下回ったかどうかだ。 一定以上、子どもの数や子育て世代の人口が減ると、小児科医のなり手が少なくなったり、学校が統合したりして、育児をしにくい環境が広がる。その結果、子どもを産み育てようという意欲が薄らぎ、さらに少子化が進展するという悪循環を招きやすい。「日本は少子化の解消に社会をあげて取り組む機会を逃し、『少子化のわな』から抜け出せないままになっている」と、国立社会保障・人口問題研究所の金子隆一副所長は指摘する。 人口減によって何が起きるのか。まず、若い労働力が減少するため、企業の活動に影響が出る。技術革新などによって生産性を上げることができなければ、日本の経済力は低下してしまう。また、経済規模も縮小する。日本政策投資銀行の推計では、2040年の個人消費は10年に比べて1割減少する。 同時に高齢化も進むため、主に現役世代の税や保険料で支えられている年金や医療、介護などの社会保障制度が行き詰まるおそれがある。 人口減少が激しい市町村では、道路、上下水道といった住民の生活基盤の維持も難しくなる。
[人口減社会]「少子化のわな」悪循環…出産担う女性減、出生率低下
2015年6月6日3時0分
1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率が9年ぶりに微減した。深刻さを増す人口減、少子化の現状と課題、歯止めがかからない背景を探った。(編集委員 阿部文彦、渡辺嘉久)
■現 状
日本の合計特殊出生率は1975年に人口維持の目安となる2を切り、2005年には1・26にまで落ち込んだ。その後、人口の多い第2次ベビーブーム(1971〜74年)世代が出生数を下支えしたことから、微増していたが、14年は1・42で、前年を0・01ポイント下回った。今回、出生率が下がったのは、20歳代での落ち込みが原因だった。若い女性の出生率が低い状態が続くと、低下傾向から抜け出すのは難しい。
生まれる子どもの数も減っている。73年に209万人だった出生数は、100万3532人と半分以下になった。出産を主に担う20歳代、30歳代の女性の人口が減っているためだ。第2次ベビーブーム世代も、40歳を超えてしまった。
出生率の低下により、日本の人口は2008年の1億2808万人をピークに減少局面に入った。このままだと、60年の人口は8000万人台に落ち込むと推計される。
少子化は先進国に共通する問題だ。近代化とともに、衛生状態が改善し、多産多死から少産少死の社会に移る。さらに、養育コストの増大、結婚、出産に対する価値観の変化が出生率を押し下げ、少子化が進む。
日本、ドイツ、イタリアのように、出生率が1台前半を低迷する国もあれば、スウェーデン、フランスのように、2000年以降、2前後にV字回復を果たした国もある。違いは、出生率が一度でも1・5を下回ったかどうかだ。
一定以上、子どもの数や子育て世代の人口が減ると、小児科医のなり手が少なくなったり、学校が統合したりして、育児をしにくい環境が広がる。その結果、子どもを産み育てようという意欲が薄らぎ、さらに少子化が進展するという悪循環を招きやすい。「日本は少子化の解消に社会をあげて取り組む機会を逃し、『少子化のわな』から抜け出せないままになっている」と、国立社会保障・人口問題研究所の金子隆一副所長は指摘する。
人口減によって何が起きるのか。まず、若い労働力が減少するため、企業の活動に影響が出る。技術革新などによって生産性を上げることができなければ、日本の経済力は低下してしまう。また、経済規模も縮小する。日本政策投資銀行の推計では、2040年の個人消費は10年に比べて1割減少する。
同時に高齢化も進むため、主に現役世代の税や保険料で支えられている年金や医療、介護などの社会保障制度が行き詰まるおそれがある。
人口減少が激しい市町村では、道路、上下水道といった住民の生活基盤の維持も難しくなる。