>>101京アニ、感情を揺さぶる作品の裏に経営陣の熱意「若い子を預かっているという自覚」 京都アニメーションを襲った放火容疑事件は、世界を震撼させた。悼む声が上がるなか、同社の監督やスタッフを知る京都文化博物館の森脇清隆・映像情報室長が、質の高い作品が生まれた背景や制作現場の日常について語った。「心からアニメを好きな人が集まり、京都で頑張ってきたスタジオがなぜ」 監督やスタッフらと交流がある京都文化博物館学芸課の森脇清隆・映像情報室長は言葉を詰まらせた。 京都アニメーションは1981年創業。現社長の八田英明さんの妻陽子さんが、宇治市で近所の主婦たちを集めてセル画の仕上げを請け負ったことに始まる。 のちに会社化され、演出から作画、動画の仕上げやデジタル処理までを手がけるようになった。「全員が自由に意見を出すのが京アニのやり方と聞く。制作費が安い外国に動画を発注する会社も多い中、仕上げまで自社でやって手を抜かない」 と森脇さんは評価する。 スタッフが原画を鉛筆で手描きして、京都や滋賀などの風景をロケして背景を作り、キャラクターの表情にあわせて繊細な動きを見せる。「クオリティーの高さや見た人の感情を激しく揺さぶる点で、京都の伝統である西陣織や清水焼に通じる。太秦に並んで京都が誇るスタジオです」 京アニの知名度を上げたのが、2000年代半ば以降からテレビ放送された「涼宮ハルヒの憂鬱」(石原立也監督)や「らき☆すた」(武本康弘、山本寛監督)のヒットだった。そして、その人気を不動のものにしたのは、09年の「けいおん!」(山田尚子監督)だ。 4コマ漫画が原作で、廃部寸前だった女子高の軽音部に入った高校生たちの群像劇。同作には、異様に細長い手足や大きな胸といったアニメにありがちな美少女キャラクターはいない。「だけどキャラクターに色っぽさとかわいさの狭間にある美しさがあった」。キャラクター名義のCDがオリコンで1位を獲得し、映画化もされた。 やがて京アニは、自社のオリジナル作品に力を入れるようになる。09年には自社でのアニメ化・文庫化を前提に小説を公募する「京都アニメーション大賞」を始め、11年には「KAエスマ文庫」というレーベルを立ち上げた。「もうけの大半を原作を出版した東京の会社が取っていくのでは、現場で汗を流して動画を描いた人に申し訳ないというのが、理由の一つだったようです」 森脇さんは13年に放送が始まった「たまこまーけっと」シリーズで、京アニのスタッフが京都市内の商店街でロケをする際に同行した。「京都の伝統や文化にふれて、それを作品内で深く表現して感動をもたらすんだと実感しました」 低賃金・長時間労働が常態化したアニメ業界では珍しく、福利厚生を充実させた労働環境でも人気を集めた。「東京にはフリーのアニメーターが大勢いるが、地方には少ない。経営陣は『若い子を預かっている』という自覚のもと、アニメーターを正社員にして生活を保障したのです」 森脇さんは、放火の被害を受けた第1スタジオを訪れたこともある。「育児中のスタッフのために子どもが遊べるスペースがあるなど配慮されており、アットホームな感じでした」 作品が高く評価される一方で、一部の原作ファンからは、キャラクターや物語の流れを大幅に変える演出に反発や非難の声もあった。「犯人は宇治市の本社ではなく、アニメーターが集まる第1スタジオを狙った。被害にあった方々やそのご家族を思うとやりきれません」(朝日新聞・伊藤恵里奈、編集部・小田健司)※AERA 2019年7月29日号より抜粋 https://dot.asahi.com/aera/2019072200035.html?page=1
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京アニ、感情を揺さぶる作品の裏に経営陣の熱意「若い子を預かっているという自覚」
京都アニメーションを襲った放火容疑事件は、世界を震撼させた。悼む声が上がるなか、同社の監督やスタッフを知る京都文化博物館の森脇清隆・映像情報室長が、質の高い作品が生まれた背景や制作現場の日常について語った。
「心からアニメを好きな人が集まり、京都で頑張ってきたスタジオがなぜ」
監督やスタッフらと交流がある京都文化博物館学芸課の森脇清隆・映像情報室長は言葉を詰まらせた。
京都アニメーションは1981年創業。現社長の八田英明さんの妻陽子さんが、宇治市で近所の主婦たちを集めてセル画の仕上げを請け負ったことに始まる。
のちに会社化され、演出から作画、動画の仕上げやデジタル処理までを手がけるようになった。
「全員が自由に意見を出すのが京アニのやり方と聞く。制作費が安い外国に動画を発注する会社も多い中、仕上げまで自社でやって手を抜かない」
と森脇さんは評価する。
スタッフが原画を鉛筆で手描きして、京都や滋賀などの風景をロケして背景を作り、キャラクターの表情にあわせて繊細な動きを見せる。
「クオリティーの高さや見た人の感情を激しく揺さぶる点で、京都の伝統である西陣織や清水焼に通じる。太秦に並んで京都が誇るスタジオです」
京アニの知名度を上げたのが、2000年代半ば以降からテレビ放送された「涼宮ハルヒの憂鬱」(石原立也監督)や「らき☆すた」(武本康弘、山本寛監督)のヒットだった。そして、その人気を不動のものにしたのは、09年の「けいおん!」(山田尚子監督)だ。
4コマ漫画が原作で、廃部寸前だった女子高の軽音部に入った高校生たちの群像劇。同作には、異様に細長い手足や大きな胸といったアニメにありがちな美少女キャラクターはいない。「だけどキャラクターに色っぽさとかわいさの狭間にある美しさがあった」。キャラクター名義のCDがオリコンで1位を獲得し、映画化もされた。
やがて京アニは、自社のオリジナル作品に力を入れるようになる。09年には自社でのアニメ化・文庫化を前提に小説を公募する「京都アニメーション大賞」を始め、11年には「KAエスマ文庫」というレーベルを立ち上げた。
「もうけの大半を原作を出版した東京の会社が取っていくのでは、現場で汗を流して動画を描いた人に申し訳ないというのが、理由の一つだったようです」
森脇さんは13年に放送が始まった「たまこまーけっと」シリーズで、京アニのスタッフが京都市内の商店街でロケをする際に同行した。「京都の伝統や文化にふれて、それを作品内で深く表現して感動をもたらすんだと実感しました」
低賃金・長時間労働が常態化したアニメ業界では珍しく、福利厚生を充実させた労働環境でも人気を集めた。
「東京にはフリーのアニメーターが大勢いるが、地方には少ない。経営陣は『若い子を預かっている』という自覚のもと、アニメーターを正社員にして生活を保障したのです」
森脇さんは、放火の被害を受けた第1スタジオを訪れたこともある。「育児中のスタッフのために子どもが遊べるスペースがあるなど配慮されており、アットホームな感じでした」
作品が高く評価される一方で、一部の原作ファンからは、キャラクターや物語の流れを大幅に変える演出に反発や非難の声もあった。
「犯人は宇治市の本社ではなく、アニメーターが集まる第1スタジオを狙った。被害にあった方々やそのご家族を思うとやりきれません」
(朝日新聞・伊藤恵里奈、編集部・小田健司)
※AERA 2019年7月29日号より抜粋
https://dot.asahi.com/aera/2019072200035.html?page=1