>>75続き 堅苦しいように見える神社の世界だが、宮司は「女人禁制」ではない。 神社本庁の規則でも神職(註・巫女のことではない)に性別はなく、最近では「女子神職会」という親睦団体もある。実際、その地域で最も格の高い「一の宮」と言われる神社に、女性宮司が就任しているケースもあるのだが、「それでも、大きな神社や社格の高い神社では、代々宮司を務めてきた家系でも女性宮司の就任が認められないケースが後を絶たないのです」 とは、首都圏の大きな神社で神職を務める関係者だ。「とくに天皇家と近い“勅祭社”において、女性が後継者になれることはまずありません。それも神社本庁が強引に介入して、トラブルを引き起こすケースもあるのです」 女性進出が当たり前の世の中で、神社界の奥にどんなタブーがあるのだろうか。たとえば、九州の名門神社で起きたケースを見てみよう。■女性を任命することはない 大分県宇佐市にある「宇佐神宮」は、約4万600社ある「八幡宮」の“総本宮”である。 祭礼時に天皇から勅使が遣わされる「勅祭社」のひとつとして知られ、広大な敷地に建てられた本殿は国宝にも指定されている。宮司職は南北朝時代から到津(いとうづ)家と宮成家が世襲してきた。宮成家が絶えた戦後は、到津家が引き継いでおり、天皇家とも縁の深い存在だ。 その宇佐神宮で後継問題が浮上したのは08年のこと。当時、責任役員会が病気療養中の宮司の後任として到津家の長女で権宮司だった到津克子(いとうづよしこ)氏を選任し、それを神社本庁に具申する。だが、いくら待っても返答がなかった。 当時の責任役員の一人だった賀来昌義氏(医師)が言う。「この年、先代の宮司が亡くなるのですが、大分県の教育委員長(現・責任役員)が私の自宅を訪れて“宮内庁の掌典長を後継者にしたい。だから承認してもらいたい”と迫ってきたのです。これに対して私は“官僚の天下りは認めない”ときっぱり拒否した。すると先方は“神社本庁は宇佐神宮のような大神社の宮司に女性を任命することはあり得ない”と言い出したのです」 結局、両者の話し合いは折り合わず、対立は決定的になる。 翌年、神社本庁は克子氏の経験不足を挙げて、大分県神社庁長を「特任宮司」として送り込む。特任宮司とは神社に後継者がいない場合、神社本庁が宮司を派遣する制度である。 もちろん、克子氏側はこれに反発、行事の際の宮司席をめぐって小競り合いが起きるなど対立が激化。さらに、克子氏は神社本庁を相手取り地位確認を求めて提訴するが13年、〈審議するべき案件ではない〉と最高裁はこれを退けてしまう。「神社では克子さんに対する日常的な監視や会話の録音なども行われました。また、待遇が一方的に引き下げられたりしたことから、不服を申し立てると、神社本庁は一昨年、克子さんの免職を決定する。当時、克子さんは母親と宇佐神宮内の敷地にある宮司邸に住んでいたのですが、それも明け渡すように通告してきたのです」(克子氏の知人) 克子氏は、解雇無効を求めて提訴し、今も宮司邸に住んでいる。 宇佐神宮にこの騒動について質したところ、代理人弁護士から以下の回答が文書で寄せられた。〈到津克子氏が宇佐神宮の宮司に任命された事実が存在していないことは、最高裁判決により、司法上も確定された事実です〉 女性の後継者が認められなかったケースでは、香川県高松市の古社・冠纓(かんえい)神社(別名・かむろ八幡宮)もある。更に続く
>>75続き
堅苦しいように見える神社の世界だが、宮司は「女人禁制」ではない。
神社本庁の規則でも神職(註・巫女のことではない)に性別はなく、最近では「女子神職会」という親睦団体もある。実際、その地域で最も格の高い「一の宮」と言われる神社に、女性宮司が就任しているケースもあるのだが、
「それでも、大きな神社や社格の高い神社では、代々宮司を務めてきた家系でも女性宮司の就任が認められないケースが後を絶たないのです」
とは、首都圏の大きな神社で神職を務める関係者だ。
「とくに天皇家と近い“勅祭社”において、女性が後継者になれることはまずありません。それも神社本庁が強引に介入して、トラブルを引き起こすケースもあるのです」
女性進出が当たり前の世の中で、神社界の奥にどんなタブーがあるのだろうか。たとえば、九州の名門神社で起きたケースを見てみよう。
■女性を任命することはない
大分県宇佐市にある「宇佐神宮」は、約4万600社ある「八幡宮」の“総本宮”である。
祭礼時に天皇から勅使が遣わされる「勅祭社」のひとつとして知られ、広大な敷地に建てられた本殿は国宝にも指定されている。宮司職は南北朝時代から到津(いとうづ)家と宮成家が世襲してきた。宮成家が絶えた戦後は、到津家が引き継いでおり、天皇家とも縁の深い存在だ。
その宇佐神宮で後継問題が浮上したのは08年のこと。当時、責任役員会が病気療養中の宮司の後任として到津家の長女で権宮司だった到津克子(いとうづよしこ)氏を選任し、それを神社本庁に具申する。だが、いくら待っても返答がなかった。
当時の責任役員の一人だった賀来昌義氏(医師)が言う。
「この年、先代の宮司が亡くなるのですが、大分県の教育委員長(現・責任役員)が私の自宅を訪れて“宮内庁の掌典長を後継者にしたい。だから承認してもらいたい”と迫ってきたのです。これに対して私は“官僚の天下りは認めない”ときっぱり拒否した。すると先方は“神社本庁は宇佐神宮のような大神社の宮司に女性を任命することはあり得ない”と言い出したのです」
結局、両者の話し合いは折り合わず、対立は決定的になる。
翌年、神社本庁は克子氏の経験不足を挙げて、大分県神社庁長を「特任宮司」として送り込む。特任宮司とは神社に後継者がいない場合、神社本庁が宮司を派遣する制度である。
もちろん、克子氏側はこれに反発、行事の際の宮司席をめぐって小競り合いが起きるなど対立が激化。さらに、克子氏は神社本庁を相手取り地位確認を求めて提訴するが13年、〈審議するべき案件ではない〉と最高裁はこれを退けてしまう。
「神社では克子さんに対する日常的な監視や会話の録音なども行われました。また、待遇が一方的に引き下げられたりしたことから、不服を申し立てると、神社本庁は一昨年、克子さんの免職を決定する。当時、克子さんは母親と宇佐神宮内の敷地にある宮司邸に住んでいたのですが、それも明け渡すように通告してきたのです」(克子氏の知人)
克子氏は、解雇無効を求めて提訴し、今も宮司邸に住んでいる。
宇佐神宮にこの騒動について質したところ、代理人弁護士から以下の回答が文書で寄せられた。
〈到津克子氏が宇佐神宮の宮司に任命された事実が存在していないことは、最高裁判決により、司法上も確定された事実です〉
女性の後継者が認められなかったケースでは、香川県高松市の古社・冠纓(かんえい)神社(別名・かむろ八幡宮)もある。
更に続く