>>76更に続き■別表神社 ここは、縁結びの神社として知られ、秋季大祭で披露される大獅子は日本最大。また、陰陽師・安倍晴明が神主だったという言い伝えもある。その、冠纓神社が神社本庁と対立したのは約10年前のことだ。「神社本庁や香川県神社庁は私たちを冷遇し続けてきたのです。その間、敷地の池にスーパーのカートを投げ捨てられたり、私が不倫をしているという噂を立てられたりしたこともありました」 そう話すのは元宮司の妻・友安(ともやす)安記子氏である。 事の発端は01年、神社と氏子が対立したところから始まる。神社側は神社本庁や香川県神社庁に解決を依頼するが、取り合ってもらえない。そこで神社本庁からの離脱を決めると、宗教法人審議会に持ち込まれ、最高裁でも争われる(11年に神社側の敗訴)。 12年、宮司が亡くなると責任役員会は長女(神職の有資格者)を宮司代務者として神社本庁と香川県神社庁に具申する。ところが、昨年、安記子氏が受け取ったのは、香川県神社庁長が宮司に就任したむねの文書。人事を店晒しにされている間に神社の宮司ポストを奪われてしまったのだ。 安記子氏は、今でも神社の建物に一人で暮らし、維持・管理などの仕事を続けている。奉納金は止められ、収入源である伊勢神宮のお神札(ふだ)の頒布もできないままである。 明治時代、国が定めた神社(官国幣社)の宮司には法律によって男性しかなれなかった。戦後に発足した神社本庁でも、当初の規則には“二十歳以上の男子”と明記されている。「しかし、戦争で男性の数が極端に減ってしまったことから、妻や娘が宮司にならないと維持できないところが出てきたのです。各地の神社から女性の神職も認めるべきだと言う声が上がり、神社本庁は数年後に女性宮司を認めるようになった。その後の女性の神職の活躍は目覚ましく、無人の神社が増えている昨今では、女性の神職がいたことで、廃社となることを避けられたケースもあるのです」(前述の神職を務める人物) こうした経緯があるにもかかわらず、前述のように「女性宮司」の就任を巡ってトラブルが起きるのはなぜなのだろうか。 先に登場した「宇佐神宮」の到津克子氏の知人は、騒動の後ろに、神社本庁の“意図”が透けて見えるという。「大きな神社だと、氏子の間にも“女性宮司には任せられない”というムードがあるのも事実です。そこに神社本庁が目を付けた。広大な敷地を持つ宇佐神宮には、140億円近い資産があるといわれています。神社本庁は神社の中央集権化を進めており、資産のある宇佐神宮を、この際“天下り先”として確保したかったはず。そのために、女性の宮司は認めないと言い出したのです」 また、別の神社関係者によると、後継者を巡って神社本庁が介入するのは、勅祭社のほか、「別表(べっぴょう)神社」と呼ばれる神社も多いという。「別表神社とは、神社本庁が特別規定で選んだ有力神社のことで本庁が人事に直接介入できます。勅祭社と同様、資産が多く、宮司の年収も高い。一般企業に例えると一部上場企業みたいなもので、神社本庁にとって絶対に手放したくない“天下り先”なのです」 先の神職を務める関係者によると、「『大喪の礼』など重要な皇室行事の際に、従者の服の材料を作る別表神社が徳島県にあります。全国に数ある神社の中でも、天皇家と結びつきの深い神社です。ここの宮司には一人娘がおり、父親の宮司も娘も後継者になることを希望していました。そこで、3年前に具申したのですが、神社庁にあっさり却下されてしまいました」 表面化こそしていないが、女性の後継問題を抱える“予備軍”は全国にある。たとえば、茨城県で一、二を争う規模の別表神社も宮司の後継候補は一人娘。「このまま今の宮司が亡くなれば、将来、神社本庁の介入があるかも知れません。神社の年間収入が10億円以上あるからです。父親の宮司は婿を迎えて継いでもらおうとしたのですが、うまくいかなかった。“宮司家は私の代で終わりだと思います”とこぼしていました」(同) そこで、神社本庁に女性神職の後継者問題について質すと、「神社本庁は、そうしたことに公式の見解は出していません」 と答えるのだった。更に続く
>>76更に続き
■別表神社
ここは、縁結びの神社として知られ、秋季大祭で披露される大獅子は日本最大。また、陰陽師・安倍晴明が神主だったという言い伝えもある。その、冠纓神社が神社本庁と対立したのは約10年前のことだ。
「神社本庁や香川県神社庁は私たちを冷遇し続けてきたのです。その間、敷地の池にスーパーのカートを投げ捨てられたり、私が不倫をしているという噂を立てられたりしたこともありました」
そう話すのは元宮司の妻・友安(ともやす)安記子氏である。
事の発端は01年、神社と氏子が対立したところから始まる。神社側は神社本庁や香川県神社庁に解決を依頼するが、取り合ってもらえない。そこで神社本庁からの離脱を決めると、宗教法人審議会に持ち込まれ、最高裁でも争われる(11年に神社側の敗訴)。
12年、宮司が亡くなると責任役員会は長女(神職の有資格者)を宮司代務者として神社本庁と香川県神社庁に具申する。ところが、昨年、安記子氏が受け取ったのは、香川県神社庁長が宮司に就任したむねの文書。人事を店晒しにされている間に神社の宮司ポストを奪われてしまったのだ。
安記子氏は、今でも神社の建物に一人で暮らし、維持・管理などの仕事を続けている。奉納金は止められ、収入源である伊勢神宮のお神札(ふだ)の頒布もできないままである。
明治時代、国が定めた神社(官国幣社)の宮司には法律によって男性しかなれなかった。戦後に発足した神社本庁でも、当初の規則には“二十歳以上の男子”と明記されている。
「しかし、戦争で男性の数が極端に減ってしまったことから、妻や娘が宮司にならないと維持できないところが出てきたのです。各地の神社から女性の神職も認めるべきだと言う声が上がり、神社本庁は数年後に女性宮司を認めるようになった。その後の女性の神職の活躍は目覚ましく、無人の神社が増えている昨今では、女性の神職がいたことで、廃社となることを避けられたケースもあるのです」(前述の神職を務める人物)
こうした経緯があるにもかかわらず、前述のように「女性宮司」の就任を巡ってトラブルが起きるのはなぜなのだろうか。
先に登場した「宇佐神宮」の到津克子氏の知人は、騒動の後ろに、神社本庁の“意図”が透けて見えるという。
「大きな神社だと、氏子の間にも“女性宮司には任せられない”というムードがあるのも事実です。そこに神社本庁が目を付けた。広大な敷地を持つ宇佐神宮には、140億円近い資産があるといわれています。神社本庁は神社の中央集権化を進めており、資産のある宇佐神宮を、この際“天下り先”として確保したかったはず。そのために、女性の宮司は認めないと言い出したのです」
また、別の神社関係者によると、後継者を巡って神社本庁が介入するのは、勅祭社のほか、「別表(べっぴょう)神社」と呼ばれる神社も多いという。
「別表神社とは、神社本庁が特別規定で選んだ有力神社のことで本庁が人事に直接介入できます。勅祭社と同様、資産が多く、宮司の年収も高い。一般企業に例えると一部上場企業みたいなもので、神社本庁にとって絶対に手放したくない“天下り先”なのです」
先の神職を務める関係者によると、
「『大喪の礼』など重要な皇室行事の際に、従者の服の材料を作る別表神社が徳島県にあります。全国に数ある神社の中でも、天皇家と結びつきの深い神社です。ここの宮司には一人娘がおり、父親の宮司も娘も後継者になることを希望していました。そこで、3年前に具申したのですが、神社庁にあっさり却下されてしまいました」
表面化こそしていないが、女性の後継問題を抱える“予備軍”は全国にある。たとえば、茨城県で一、二を争う規模の別表神社も宮司の後継候補は一人娘。
「このまま今の宮司が亡くなれば、将来、神社本庁の介入があるかも知れません。神社の年間収入が10億円以上あるからです。父親の宮司は婿を迎えて継いでもらおうとしたのですが、うまくいかなかった。“宮司家は私の代で終わりだと思います”とこぼしていました」(同)
そこで、神社本庁に女性神職の後継者問題について質すと、
「神社本庁は、そうしたことに公式の見解は出していません」
と答えるのだった。
更に続く